保育所会計センターブログ

【収支計算分析表】認可保育所向け解説

認可保育所では、決算書とは別に、収支計算分析表という書類の提出が必要となる場合があります。

「子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について(経理等通知)」において、次のいずれかに該当する場合は収支計算分析表の提出が義務付けられています。

(1)限度額を超えて弾力運用を行った場合
(2)委託費の支出が経理等通知の定めによっていない場合
(3)積立資産への積立支出及び当期資金収支差額合計が、事業活動収入計の5%を上回る場合

本記事では、収支計算分析表作成義務の確認方法や収支計算分析表の作成方法について解説していきます。

まず、一つ目の提出要件である限度額を超えて弾力運用を行った場合について解説します。

弾力運用の要件は三段階に分かれており、充足する要件が多いほどその限度額や支出範囲が広がっていきます。

弾力運用の第二段階まで要件を充足すると、処遇改善加算の改善基礎分相当額まで、委託費を同一の設置者が設置する保育所等の以下の支出に充てることができるようになります。

  1. 建物、設備の整備・修繕、環境の改善等に要する経費
  2. 土地又は建物の賃借料
  3. 上記1,2に係る借入金(利息を含む)の償還又は積立のための支出
  4. 租税公課

なお、弾力運用については、以下の記事で解説を行っていますので、参考にしてください。

【認可保育所における委託費の弾力運用】

さらに、第三段階の要件を充足することで、委託費の3か月分相当額まで、同一の設置者が設置する保育所等の上記(1)から(4)の支出、並びに子育て支援事業の上記(1)及び(3)※の支出に充てることができ、これに加え土地の取得等に要する経費も支出することが可能です。
※土地又は建物の賃借料に係る借入金は除く

また、改善基礎分相当額を限度として、同一の設置者が設置する社会福祉施設の上記(1)から(4)及び土地の取得等に要する経費に支出することもできます。

これらの支出額を、各段階の限度額を超えて行った場合は、収支計算分析表の作成が求められます。

次に、委託費の支出が経理等通知の定めによっていない場合です。

これは、上述の限度額を超えて弾力運用を行った場合も含みますが、委託費の運用を経理等通知に定めた通りに行っていないこと全般を指しています。

具体的には以下のようなケースが想定されます。

  1. 事前協議を行っていない(社会福祉法人及び学校法人においては理事会の決議を経ていない)にも関わらず前期末支払資金残高を取崩し、本部経費に支出している。
  2. 委託費を他拠点に貸し付けている。
  3. 期末支払資金残高が当該年度の委託費収入の30%超となっている。

こういった事実があった場合に収支計算分析表の提出が必要となりますが、提出さえしていれば経理等通知の定めに反していてもよいということではありません。
自治体の指導監査において上記のような事実が発覚した場合には、高い確率で口頭指摘または文書指摘になると予想されます。

三点目としては、積立資産への積立支出及び当期資金収支差額合計が事業活動計の5%を上回る場合です。

社会福祉法人会計の決算書を作成している場合は、資金収支計算書における事業活動収入に5%を乗じて、当期資金収支差額及び積立資産積立支出の合計と比較することでこの要件に該当するか確認することができます。

企業会計など、社会福祉法人会計の決算書を作成していない場合は、売上や営業外収益など収益の科目から資金収支計算書の事業活動収入にあたるものを集計して5%を乗じ、前期末支払資金残高と当期末支払資金残高の増減額と積立資産の積立額との合計額と比較します。

この結果5%を上回っている場合は、収支計算分析表の提出が必要となります。
収支計算分析表を提出していさえすれば特に罰則などはありません。

最後に、収支計算分析表の作成方法について解説します。

基本的には、資金収支計算書の残高を入力していけば問題ありません。
ただし、「10 委託費収入のうち改善基礎分」は自身で集計するか自治体に問い合わせるなどの対応が必要で、資金収支計算書には表示されていない項目です。

この項目に記載した金額を、資金収支計算書における委託費収入の計上額から控除し、「1 委託費収入(改善基礎分を除く。)」に記載します。

また、利用者等利用料収入や雑収入、利用者等外給食費収入など一般的に計上されることが多い科目が別表6の様式に無いことがあります。
この場合は必要に応じて科目を追加していく必要があります。

すべて入力し終わったら、収入、支出各欄の合計額が一致していることを確認してください。
もし一致していなければ、どこかに入力漏れや誤記入があることになります。


なお、ここでは経理等通知の別表6に定められた様式の記載方法を解説しましたが、東京都や横浜市など、独自に様式を一部改変している自治体もあるので注意が必要です。

今回の記事では、収支計算分析表の提出要件や作成方法について解説していきました。

収支計算分析表の提出要件に該当しているにも関わらず、提出がなされていない場合、指導監査における指摘対象となる可能性が高いです。

また、場合によっては収支計算分析表を提出してあったとしても、収支計算分析表の提出要件に該当するような事実があったこと自体が指摘につながる恐れもあります。

収支計算分析表の提出を忘れないことももちろんですが、弾力運用の限度額を超過しないなど経理等通知に則った運用を行うよう気を付けるようにしてください。

【認可保育所における委託費の弾力運用】
【支払資金残高の取り扱い】
【5%ルールと30%ルール】

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この記事の監修者

株式会社アダムズ
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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