
認可保育所の委託費
本記事では、認可保育所に支弁される委託費の積算方法と各種加算について解説します。
認可保育所では、延長保育料などを除き、原則として保護者から直接利用料を受け取ることはありません。
利用料は市町村が代理で徴収し、その徴収した額も含めた金額が「委託費」として各施設に対し支弁されるという仕組みになっています。
この委託費は、公定価格表で定めた公定価格に基づいて、施設が所在する地域、定員に応じて金額が算定されます。
また、特定の要件を満たす園においては、様々な加算が設けられており、これが委託費に上乗せされることになります。
今回の記事では、委託費の積算方法と加算について概要を説明していきます。
委託費の構成
委託費は大きく、基本部分、基本加算部分、特定加算部分の3つに区分されています。
基本部分はすべての保育所に支弁されるもので、地域、定員並びに児童の年齢別に単価が定められています。
単価は0歳が最も高く、年齢が高くなるにつれて低くなっていきます。
その単価に各年齢の在籍児童数を乗じて、積算します。
次に基本加算分で、各要件を満たした保育所に支弁され、基本部分と同様に地域並びに定員別に単価が定められていますが、処遇改善加算を除き各年齢においては均一のとなっています。
積算方法も加算額に児童数を乗じるという方法で基本部分とほぼ同じですが、処遇改善等加算は加算率も乗じる必要があります。
最後に特定加算分です。
特定加算分は基本分、基本加算分とは異なり、地域区分及び定員に関わらず、すべての施設で同一の単価が使用されます。
また、積算方法も単価に児童数を乗じるというものではなく、各加算によって算定方法が異なります。
委託費の減額
施設の運営実態に応じて、以下の4つの場合に委託費が減額されます。
1.分園の場合
分園は本園とは区分して委託費が積算されます。この場合、分園の積算時には基本文単価と処遇改善加算に10/100を乗じた額が減額されます。
2.施設長を配置していない場合
施設長を配置していない園では、単価に加算率を乗じた額が減額されます。
3.土曜日に閉所する場合
土曜日に施設を閉所した場合、その閉所日数に応じた額が減額されます。
4.定員を恒常的に超過する場合
過去5年間において常に定員を超過している場合、一定の調整率を乗じた額が減額されます。
基本分加算
基本分加算は、一定の要件を満たしている保育所に対し、委託費に上乗せされて支弁されます。
ここではよく見られる加算を抜粋して解説していきます。
処遇改善加算
処遇改善加算は、令和7年度の改正によってその積算方法も変更されました。
令和6年度以前は単価に処遇改善加算Ⅰの加算率を乗じる方法でしたが、令和7年度より、処遇改善加算の区分1及び区分2の加算率と公定価格表に定める数値を合計した率を単価に乗じます。
※処遇改善加算の改正と要件については、以下の記事をご参照ください。
処遇改善加算の他によく見られる加算
1.3歳児配置改善加算、4歳以上児配置改善加算
保育士を、3歳児15人につき1人、4歳以上児25人につき1人配置すると加算が適用されます。
この加算には処遇改善加算分が含まれており、当該加算分には加算率を乗じて加算額を算定します。
2.1歳児配置改善加算
令和7年度より新設された加算です。
保育士を、1歳児5人につき1人配置すると加算が適用されます。
この加算も3歳児配置改善加算及び4歳以上児配置改善加算と同様に処遇改善加算分が含まれます。
3.賃借料加算
保育所の用に供する建物が賃貸物件で、賃貸物件に対する賃借料が発生している場合に加算が適用されます。
都市部であるほど高い単価が設定されています。
特定加算分
特定加算は、すべての地域、定員に共通した単価が設定されており、以下の加算を受けている園がよく見られます。
1.主任保育士専任加算
基本分単価及び他の加算等の認定に当たって求められる必要保育士数を超えて代替保育士を配置し、延長保育事業、一時預かり事業、病児保育事業、乳児の3人以上の受け入れ、障害児の1人以上の受け入れ、災害等の場合の行政並びに関係機関との連携のためのマニュアル整備及び研修・訓練の月1回実施のいずれかの事業を、複数実施する施設に加算されます。
2.療育支援加算
主任保育士専任加算の対象施設で、かつ障害児を受け入れている施設において、主任保育士を補助する者を配置し、地域住民等の子どもの療育支援に取り組む場合に加算されます。
3.事務職員雇上費加算
事務職員を配置し、主任保育士専任加算で列挙した事業(災害時の対応を除く)のいずれかを、複数実施している場合に加算されます。
4.栄養管理加算
食事の提供に当たり、栄養士等を活用して、栄養士等から献立やアレルギー、アトピー等への助言、食育等に関する継続的な指導を受ける施設に加算されます。
まとめ
今回の記事では、保育所における委託費の積算方法とその各種加算について、概要を解説してきました。
認可保育所においては収益の大部分が委託費であるため、特に予算の策定にあたっては、委託費の積算方法について理解を深めておく必要があります。
また、各種加算を把握しておくことで、加算認定の漏れを防ぐことができ、収益の増加にも繋がります。
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