保育所会計センターブログ

【保育所における指導監査】

認可保育所では、所轄の自治体によって、定期的に施設単位の指導監査が実施されます。
所轄自治体は、政令指定都市並びに中核市に所在する保育所であればその所在する市、それ以外は都道府県とされています。

自治体によって異なることはありますが、多くの指導監査時は、保育、運営、会計のセクションに分かれて実施され、所轄自治体の職員によって監査がなされます。
なお、会計については、特に専門的な知識を要することから、公認会計士などの専門家に委嘱しているケースも多く見られます。

指導監査においては、各自治体が定める監査基準に則った施設運営がなされていない場合、その程度に応じて助言、口頭指摘、文書指摘のいずれかの区分で問題点が講評されます。
助言が最も軽く、文書指摘が最も重い処分で、文書指摘となった場合は、改善報告書の提出が求められます。
また、文書指摘の内容は、各自治体によってホームページなどで公表されることになります。

本記事では、保育所の指導監査において確認がなされる、または指摘となるケースが多い論点を紹介していきます。

保育所の指導監査においては、ほとんどの場合、弾力運用要件充足の有無を確認されます。

第一段階、第二段階の要件は、ほぼすべての保育所で充足しているため口頭での聞き取りのみ、もしくは確認がなされないこともあります。

※第一段階、第二段階の要件は、以下の記事で解説を行っております。

【認可保育所における委託費の弾力運用】

一方、第三段階の以下の要件は、現地で対応状況の確認がなされることが多く、事前の準備が重要です。

弾力運用における第三段階の要件では、決算書を施設に備えおくことが義務付けられています。


この決算書とは、企業会計であれば貸借対照表及び損益計算書、社会福祉法人会計であれば資金収支計算書、事業活動計算書及び貸借対照表をいいます。

また、備えおく決算書は、法人単位ではなく施設単位のものでなくてはなりません。

さらに、決算書は、備えおくだけではなく、閲覧に供していることも必要です。

閲覧に供する方法については、必ずしも掲示しておく必要はありません。
掲示しておくスペースが無い等の事情がある場合は、例えばファイルなどに綴じて誰でも手に取ることができるような場所に置いておくという方法も選択肢の一つです。

ただし、上記の保管方法については、ファイルに綴じた決算書を事務室に保管しており、職員に声をかけなければ閲覧できる状態ではなかったことから、指摘を受けたケースも過去にありました。
そのため、保管にあたっては、誰でも常に手に取ることができる状態が好ましいといえます。

弾力運用においては、決算書の備えおき及び閲覧のほか、以下のいずれかが実施されていることも第三段階の要件となっています。

  1.  第三者評価加算の認定を受ける
  2.  入所者等に対して苦情解決の仕組みが周知されており、第三者委員を設置して適切な対応を行っているとともに、入所者等からのサービスに係る苦情内容及び解決結果の定期的な公表を行うなど、利用者の保護に努めること

上記の1については、委託費の加算の状況を見れば要件の充足を確認することができるため漏れることはまずありません

しかし、2については、対応できておらず指摘を受ける施設が多く見られます。

よくあるケースを2つ紹介します。

1つ目は、苦情がなかったのために公表を行っていないケースです。
苦情がなければ、なかったという事実を公表する必要があります。

そして、2つ目は、定期的に公表を行っていなかったケースです。
「定期的」については、どの程度であるのかは定義されていませんが、1年に一度公表を行っていればよいと考えられます。

また、多くの自治体において公表の方法は、ホームページに掲載することが望ましいとされています。
他にも広報誌などに掲載する方法がありますが、ホームページでの公表が簡便で費用も抑えることができます。

保育所の指導監査においては、支払資金残高を「子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について」(経理等通知)の定めに従って運用しているかについての確認も、必ずと言ってよいほど実施されます。

ここで、支払資金残高の保有限度額、運用については、経理等通知において厳しく定められています。
この定めに沿った運用がなされていない場合、文書指摘になったケースも多く見受けられます。

当期末支払資金残高には、上限額が定められており、当該年度の委託費収入の30%以下とすることとされています(30%基準)。

この30%基準は、厳格に確認がなされ、この基準を超過している場合、文書指摘となる可能性があります。

そのため、決算書作成時においては、基準超過の有無を確認し、超過している場合は積立資産の積み立てを行うといった対応が必要です。

前期末支払資金残高については、取崩しについても制限が設けられています。

社会福祉法人及び学校法人以外の法人では、一定の場合を除き、前期末支払資金残高の取崩しを行う場合、事前に所轄自治体と協議を行う必要があります。

多くの法人では、本部の経費を保育所から支出していますが、これは所轄自治体との事前協議(社会福祉法人及び学校法人においては理事会の承認)を経た上で、前期末支払資金残高を取り崩すことによって行わなければなりません。

なお、前期末支払資金残高を取り崩しについては、事前協議を実施せずに本部経費の支出を行い、文書指摘となったケースを多数見たことがあります。
毎年必ず事前協議の手続きを実施しているか確認を行うことが重要です。

今回の記事では、指導監査の概要と、指摘を受けることが多い論点について2点解説していきました。

今回紹介した論点は、監査当日、または監査直前に対応しても間に合わないことが多く、しっかりとした事前の準備が必要なポイントです。

文書指摘を受けると改善報告書の提出を行うだけではなく、その指摘内容が公表され、園児の定員充足にも大きな影響を与える恐れもあります。

文書指摘につながる可能性が高い論点は日ごろから意識し、経理等通知に則った運用がなされているか社内で定期的に確認を行うことが必要です。

【認可保育所における委託費の弾力運用】
【支払資金残高の取り扱い】
【苦情内容と解決方法の公表】

・認可保育所の委託費に係る弾力運用や経理のご相談をご検討の場合は、こちらのページにサービス

この記事の監修者

株式会社アダムズ
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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