認可保育所の経理規程とは
本記事では、認可保育所の経理規程について解説します。
まず、経理規程とは、法人の会計・経理についての方針や、手続きなどについて定めたルールであり、認可保育所であれば、所管自治体から必ず作成を求められます。
多くの場合、社会福祉法人のモデル経理規程に準じて作成し、表現を株式会社に合う形にカスタマイズしています。
また、指導監査においては、この経理規程に定めた通りの運用がなされているか確認が行われます。
本記事では、認可保育所の経理規程のうち、指導監査において確認がなされた事例が多い項目について記述していきます。
認可保育所の経理規程の注意点1(経理事務の役職)
まず、認可保育所の経理規程のうち経理事務の役職について解説します。
認可保育所の経理規程では、経理事務に関する責任者として役職を設けます。
ここで、一般的には、会計責任者、出納職員を設けることが多くあります。
また、施設数が多い場合には統括会計責任者、副会計責任者といった役職を、必要に応じて設けることがあります。
なお、多くの認可保育所では、会計責任者は理事長への月次決算、支出の承認、予算編成、小口現金の管理など経理事務全般についての責任者となります。
また、出納職員は、主に現金の出納を行います。
ここで、認可保育所の経理規程では、任命権者を明確にする必要があります。
例えば、「施設長がこれにあたる」「理事長が任命する」などと定めを行い、誰がこの役職を務めるかを明確にする必要があります。
また、任命する場合は、辞令など任命したことがわかる書類の作成が必要です。
指導監査においては、この任命したことがわかる書類の確認が行われることが多くあります。
認可保育所の経理規程の注意点2(現金管理)
次に、認可保育所の経理規程のうち現金の管理について解説します。
ここで、指導監査においては、出納に関して現金を受け取った場合の手続き、小口現金を支出する際の手続き、そして残高の確認について必ず確認がなされます。
そのため、認可保育所の経理規程では、現金の管理についてどの役職によって手続きがなされるのかを具体的に定める必要があります。
また、実際の運営にあたっては、当該経理規程に沿って手続きが行われているかという点が重要となります。
以降、現金の管理のうち、現金の収納と小口現金の取り扱いについて詳述します。
現金の収納
まず、現金の収納について解説します。
現金の管理にあたり、保護者などから受け取った現金は、直接支出に充当することはできません。
受領した現金は、小口現金とは区分して管理する必要があります。
また、受領した現金は、すみやかに預金口座へ預け入れることが望ましいとされています。
そのため、認可保育所の経理規程では、収入後何日以内に預け入れを行うかについて定め、当該規程に従い運用がされる必要があります。
なお、現金の収入手続きは事務手続き上、非常に煩雑となります。
そのため、現金での入金は、可能な限り少なくなるように手続きや運営面を見直すことが有用となります。
小口現金の取り扱い
次に、小口現金の取り扱いについて解説します。
小口現金は、その出納について出納職員など管理責任者を定め、小口現金が保管されている金庫は当該管理責任者のみが開けることができる状態にしなくてはなりません。
また、会計責任者など出納職員を管理する者は、小口現金の実査を行い、実際残高が出納帳と一致しているか確認を行う必要があります。
ここで、実査の頻度に定めはありませんが、毎日行うことと定めている規程が多くあります。
さらに、現金実査を実施した際には、確認にあたり金種表を作成することが好ましいとされています。
認可保育所の経理規程の注意点3(固定資産管理)
認可保育所の経理規程のうち固定資産管理について解説します。
ここで、固定資産は、現金同様その管理責任者を定めなくてはなりません。
ここで、認可保育所の経理規程においては、会計責任者が固定資産管理責任者を兼務しており、その旨を規定している事例が多くあります。
なお、会計責任者とは別の者が務める場合は、任命したことがわかる書類を作成しておくことが必要となります。
指導監査においては、固定資産台帳に記載されている資産が、実際に施設にあるか実地確認が行われることがあります。
ここで、除却、または他施設への移管が行われた際には、会計処理が漏れることによって固定資産台帳と差異が生じている場合があります。
そのため、除却や移管にあたっては、申請者、承認者、経理事務担当者への報告の流れを明確にしておくといった対応が求められます。
また、毎年度末日において固定資産の実地棚卸を実施し、実施した記録として固定資産現在高報告書を残すようにします。
認可保育所の経理規程の注意点4(契約)
最後に、認可保育所の経理規程のうち契約に関して解説します。
経理規程に契約に関する規定がなされるのは、社会福祉法人等の非営利法人の経理規程特有となり、一般の株式会社等の経理規程では、あまりなされない記載項目となります。
ここで、指導監査においては、当該契約について経理規程に定めた通りの手続きが実施されているかを確認されることも多くあります。
なお、株式会社の場合、契約にあたっては競争契約を行う必要はなく随意契約でよいとされていますが、適正に相見積もりを実施することが求められます。
また、認可保育所の経理規程においては、契約を行うことができる者を明らかにし、契約書の作成や定期的な契約の見直しについても経理規程に定めなくてはなりません。
以下、契約に関する記載のうち「相見積もり」と「契約の手続き」について詳述します。
相見積もり
まず、相見積もりについて解説します。
ここで、相見積もりとは、複数の相手先から見積もりを入手することをいいます。
そして、保育所の場合、契約にあたっては原則として相見積もりが必須となっています。
なお、通常は2社による相見積もりですが、社会福祉法人のモデル経理規程では次の金額を超える場合は3社による相見積もりを行うことと定められています。
1 工事または製造の請負:250万円
2 食料品・物品等の買入れ:160万円
3 その他の契約:100万円
社会福祉法人ではない株式会社等が認可保育所を運営する場合であっても経理規程においては、上記金額に応じて3社による相見積もりを行うこと定めることが指導されています。
契約の手続き
次に、契約の手続きについて解説します。
指導監査では、契約書や契約手続きの確認がなされます。
なお、契約書の作成がない契約の場合には、申込書や請書、覚書などそれに代わる書類の保管が必要です。
また、契約書の作成を省略することができる場合について経理規程に定めることにより、少額な契約などで必ずしも契約書の作成が必要ではなくなります。
さらに、継続的な契約である場合は、定期的に契約内容の見直しを行うことが求められます。
ここで、「定期的」の定義はありませんが、例えば、契約の更新時に相見積もりをとっておくといった対応を行っていれば問題ありません。
まとめ
今回の記事では認可保育所において経理規程に定めるべき内容ついて解説しました。
指導監査においては、経理規程に定めた手続きと実際の事務処理に整合していない箇所がないかという点が重要視されます。
各役職の任命や現金の取り扱い、契約手続きについては適切に実施されていない場合は指摘につながる可能性がありますので、経理規程通りとなっているか実務の流れを見直すことが有用となります。
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