
認可保育所における現金の管理
本記事では、認可保育所における現金の管理方法について解説していきます。
認可保育所では、多くの場合、日々の経費の支払のために小口現金をおく場合が大半です。
また、延長保育料などの利用者負担金を現金で収受するケースもあり、施設でその現金を管理している場合もあります。
現金は、その管理方法を経理規程等に明確に定めた上で運用していく必要があります。
指導監査においても、経理規程等に則った運用がされているか確認がなされることが非常に多くなっています。
今回の記事では、認可保育所で求められる現金の管理方法について説明していきます。
小口現金の設定
施設に小口現金を設ける場合、経理規程にその旨を定める必要があります。
まず、経理規程に定める事項として小口現金の補充方法を規定します。
補充方法には大きく定額資金前渡制度と随時補給制度に区分されます。
定額資金補充方法は一定期間(一か月など)ごとに、定額を前もって渡しておく方法です。
随時補給制度は、必要に応じて都度補充します。
どちらが正しいということはありませんので、管理しやすい方法を定めます。
また、経理規程には、小口現金の限度額も定めなくてはなりません。
ここでいう限度額は、補充金額ではなく、保有額の限度額です。
例えば限度額を10万円に定めていた場合、1万円を保有した状態で10万円補充してしまうと小口現金の残高は11万円となり、規程で定める限度額を超過することとなります。
小口現金の補充を行う管理者は、小口現金の残高を把握した上で実施しなくてはなりません。
限度額を超過した場合、指導監査において指摘の対象となる可能性があります。
管理者の設定
小口現金及び現金は、その管理者を設定しなくてはなりません。
認可保育所において設けられている役職は、多くの場合、会計責任者と出納職員です。
出納職員は実際に現金の出納を行う職員で、会計責任者は出納職員を監督します。
このため、出納職員は施設の職員を任命することが、実務での運用上好ましいです。
本部の職員を出納職員にした場合、小口現金での費用の支払事務が滞ってしまう場合があるためです。
会計責任者は施設の職員または本部職員のどちらでも、実態に合わせる形で問題ありません。
出納職員は施設長、会計責任者は本部の経理担当者とされているケースが多いように見受けられますが、これはあくまで一例です。
法人によって運用しやすい形を検討することが重要です。
役職については、その職名と任命者を経理規程に定め、任命書や辞令などを毎年度作成します。
ただし、「会計責任者は代表取締役とする」など、経理規程において特定するのであれば任命書、辞令は必要ありません。
小口現金の出納、管理及び残高確認
次に、小口現金の出納と管理方法、そして残高確認の流れを解説していきます。
ここでは例として、出納職員が出納事務を行い、会計責任者がその管理を行うということを前提とします。
小口現金の出納及び管理
小口現金は、使用者から申請を受けた上で出納職員が承認し、支出を行います。
使用者が立替を行った費用を小口現金から支出することという事例もありますが、このような行為は、望ましくないとされています。
しかし、出納職員が不在である等、実務の都合上どうしても立替えとなるケースもあります。
このような場合は、原則としては仮払を行い、余った現金を領収書等の証憑とあわせて戻してもらうという運用となります。
出納職員は、小口現金の出納を行った都度、出納帳に日付、金額、支出の内容を記載していきます。
また、小口現金は鍵のかかる金庫などに保管した上で、出納職員がその鍵を管理しなくてはなりません。
出納職員以外が使用することができないよう、金庫と鍵の保管場所は分けておく必要があります。
小口現金の残高確認
小口現金は、定期的に残高の確認を行わなければなりません。
残高の確認とは、小口現金の実際残高と、出納帳の残高が整合していることの突合作業です。
定期的の基準はありませんが、モデル経理規程では「毎日の現金出納終了後」とありますので、毎日行うことがよいでしょう。
残高の確認は出納職員が行うのではなく、会計責任者が実施します。
小口現金の使用者と確認者を区分するためです。
会計責任者は確認を行ったことがわかるようにサインや押印などの記録を残します。
また、必須ではありませんが、金種表を作成することが好ましいとされています。
収納現金
利用者から、その利用料を現金で収受することがあります。
収納した現金は小口現金に充てることはできず、別途管理する必要があります。
また、収納した現金は数日以内に金融機関の預金口座へ預け入れます。
この預け入れまでの日数は経理規程で定めます。
日数の基準はありませんが、長くて10日程度が限度のようです。
ただ、自治体によって考え方が異なるため、所轄自治体に確認が必要です。
収納した現金は、小口現金と同様に出納帳を作成し、その残高の確認を行います。
まとめ
今回の記事では、認可保育所における現金の出納及び管理について解説してきました。
認可保育所の指導監査においては、多くの場合、現金の取り扱いが経理規程で定められているか、また定めた通りの運用となっているか確認がなされます。
指導監査の対応としても経理規程での規定は必須ですが、横領を防止するという内部統制の観点からも現金に関するルール作りは重要です。
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